ロングライドやブルベといった長距離サイクリングにおいて、ペダリングの技術や補給計画と同じくらい重要なのが「皮膚の保護」である。
筆者は2015年にロードバイクを始め、今では600kmブルベを完走しSR(シューペル・ランドヌール)を取得するまでになったが、初心者の頃はサドルとの摩擦による股ずれに何度も泣かされてきた。
特に200km、300kmと距離が伸びるにつれて、この小さな皮膚トラブルが完走を阻むほどの激痛に変わることもあるのだ。
様々な対策を試した結果、最終的にたどり着いたのが皮膚保護クリーム「プロテクトJ1」である。
これは単なる気休めのアイテムではなく、過酷なロングライドを走り切るための戦略的装備と言えるだろう。
この記事でわかること
- プロテクトJ1が皮膚を保護する基本的な仕組み
- サイクリスト向けの具体的な4つの活用シーン
- プロテクトJ1のメリットと注意すべき点
- 効果を最大化させる正しい使い方
プロテクトJ1とは?長時間持続する皮膚保護クリームの正体である
「プロテクトJ1」は、長時間の運動によって引き起こされる皮膚の摩擦や刺激から肌を守るために開発された保護クリームである。
サイクリストの間では股ずれ対策の定番として知られているが、その効果は全身のあらゆる皮膚トラブルに応用可能だ。
主成分と皮膚を保護する仕組み

「プロテクトJ1」の主成分は、撥水性の高い油性成分である。
これを皮膚に塗り込むと、目に見えない薄い保護膜が形成される。
この保護膜が第二の皮膚のように機能し、汗や雨などの水分を弾きながら、ウェアやサドル、靴などとの物理的な摩擦を大幅に軽減してくれるのだ。
特徴的なのは、皮膚の呼吸を妨げずに保護効果を発揮する点である。
これにより、長時間の使用でも蒸れにくく、快適な状態を維持することができる。
他のクリーム(ワセリンなど)との違いは何か?

「皮膚保護なら安価なワセリンでも良いのではないか?」と考える人もいるだろう。
確かにワセリンにも一定の保護効果はある。
しかし、「プロテクトJ1」とワセリンには決定的な違いが存在するのだ。
項目 | プロテクトJ1 | ワセリン |
持続性 | 非常に高い(7~8時間) | 低い(汗で流れやすい) |
撥水性 | 非常に高い | 高い |
使用感 | サラッとしておりベタつきが少ない | ベタつきが強く、ウェアに付着しやすい |
落としやすさ | 専用クレンザー推奨 | 石鹸で比較的落ちやすい |
価格 | 比較的高価 | 安価 |
最大の利点は「持続性」である。
ワセリンは汗や雨で流れやすく、ロングライドの途中で何度も塗り直す必要がある。
一方、「プロテクトJ1」は皮膚への密着性が非常に高く、一度塗れば7~8時間は効果が持続すると言われている。
これは、頻繁に停止して休憩を取ることが難しいブルベなどでは、計り知れないアドバンテージとなるのだ。
ロングライド・ブルベでプロテクトJ1が必須である4つの理由
筆者が「プロテクトJ1」を単なる便利グッズではなく「必須装備」と断言するのには、明確な理由がある。
ここでは、自身の経験に基づいた4つの具体的な活用シーンを紹介しよう。
理由1:不快な股ずれ・サドルスレからの解放

これこそが、サイクリストが「プロテクトJ1」を使う最大の理由である。
長時間サドルに跨り、同じ動作を何万回と繰り返すサイクリングでは、股間や内腿、尻の皮膚がサドルやレーサーパンツのパッドと擦れ、炎症を起こしやすい。
軽い擦り傷から始まり、悪化すると皮膚がめくれて激痛を伴う「サドルソア(Saddle Sore)」と呼ばれる状態になる。
一度こうなると、サドルに座ること自体が苦痛になり、ライドの継続は不可能だ。
筆者もSRを取得する過程で、数々のロングライドを経験したが、プロテクトJ1を導入してからは、股ずれによるリタイアの心配が完全になくなった。
ライド前に「プロテクトJ1」を股間周りを中心に塗り込んでおくだけで、400km、600kmといった長丁場でも、皮膚は常にサラサラの状態が保たれ、摩擦によるダメージを全く感じずに済む。
これは精神的な安心感にも繋がり、ペダリングに集中できるという副次的な効果も大きいのだ。
理由2:雨天走行の強敵「皮膚のふやけ・靴擦れ」を徹底ブロック

ブルベをはじめとするロングライドでは、天候の急変は日常茶飯事である。
特に雨天走行は体温を奪うだけでなく、もう一つの厄介な問題を引き起こす。
それが「足の皮膚のふやけ」だ。
シューズカバーをしていても、長時間の雨では靴の中に水が侵入し、靴下はずぶ濡れになる。
水に長時間浸かった足の皮膚はふやけて非常にデリケートな状態になり、わずかな摩擦でも靴擦れやマメができてしまうのだ。
これは股ずれ同様、一度発症すると激痛でペダルを回せなくなる深刻なトラブルである。

この対策として、「プロテクトJ1」が絶大な効果を発揮する。
雨が予想される日の朝、ライド前に足の指からかかと、くるぶしまで、足全体に「プロテクトJ1」を薄く塗り込んでおくのだ。
強力な撥水性の保護膜が、靴の中に水が溜まっても皮膚が直接水分を吸収するのを防ぎ、ふやけるのを大幅に遅らせてくれる。
筆者は600kmブルベの2日目、約10時間にわたって豪雨の中を走り続けた経験があるが、この「足J1」のおかげで靴擦れを一切起こさず、無事に完走することができた。
これは、雨天走行の機会が多いサイクリストにとって、まさに救世主と言える活用法である。
理由3:汗やウェアとの摩擦から全身の皮膚を守る

「プロテクトJ1」の活躍の場は、股間や足だけではない。
サイクリング中は、体中のあらゆる場所でウェアとの摩擦が起きている。
【プロテクトJ1の活用部位例】
- 首筋: ヘルメットのストラップやジャージの襟が擦れる部分
- 脇の下: ジャージの縫い目が擦れて痛むことがある
- 乳首: 特に男性は、汗で濡れたジャージとの摩擦で擦り切れることがある(通称:乳首スレ)
- サドルバッグのストラップが当たる太もも: 大型のサドルバッグを使っていると、ストラップが太ももに干渉して擦れることがある
- 手のひら: 体重がかかりやすい手のひらも擦れによる痛みが発生することがある
- 耳の裏: 骨伝導イヤホンを長時間着用していると痛むことがある
これらの部位にあらかじめ薄く塗っておくことで、不快な擦り傷を未然に防ぐことができる。
特に夏場の滝のような汗をかく状況では、汗の塩分が刺激となって炎症を悪化させることもあるため、プロテクトJ1による保護は非常に有効だ。
理由4:驚きの持続力と携帯性

前述の通り、「プロテクトJ1」の最大の強みはその持続力にある。
朝一度塗れば、日中のライドで効果が切れる心配はほとんどない。
しかし、24時間を超えるようなブルベや、真夏の大量発汗が予想されるライドでは、途中で塗り直し(追いJ1)が必要になる場面も考えられる。

そんな時に便利なのが、携帯性に優れた小型チューブの存在だ。
「プロテクトJ1」には容量別にいくつかのラインナップがあるが、最小の15mlチューブや35mlチューブなら、ツールケースやサドルバッグに忍ばせておいても全く邪魔にならない。
「お守り」として一つ携帯しておくだけで、万が一の際にも対応できるという安心感は、ロングライドのメンタルを支える上で非常に重要である。
【効果を最大化】プロテクトJ1の正しい使い方と注意点
「プロテクトJ1」は非常に優れた製品だが、その効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方を知っておく必要がある。
また、いくつか注意すべき点も存在する。
塗るタイミングはいつがベストか?

結論から言うと、ライドの30分前がベストである。
「プロテクトJ1」は、塗ってから皮膚に馴染み、安定した保護膜を形成するまでに少し時間がかかる。
直前に塗ると、ウェアを着る際に擦れて取れてしまったり、効果が十分に発揮されなかったりする可能性がある。
朝、着替える前の清潔で乾いた肌に塗り込み、しっかりと馴染ませてからウェアを着用するのが理想的だ。
適量はどのくらい?塗り方のコツ

量は多すぎても少なすぎてもいけない。
目安としては、塗りたい範囲に薄く、均一に伸ばせるくらいの量だ。
例えば股ずれ対策なら、人差し指の第一関節くらいまでの量を取り、皮膚に優しく刷り込むようにマッサージしながら伸ばしていく。
「塗った」という感覚よりも「膜が一枚できた」という感覚になるのが正しい状態だ。
ベタつきを感じる場合は、量が多すぎる可能性が高い。
使用上の注意点と落とし方

「プロテクトJ1」には、一つだけ明確なデメリットがある。
それは「落ちにくい」ことだ。
この強力な密着性こそが長時間の保護性能の源泉だからだ。
とはいえ、ライド後のシャワーで普通の石鹸やボディソープで洗うことで、徐々にヌルヌルが取れるようになる。
【プロテクトJ1の落とし方】
- お湯で洗い流す: ライド後はまず、お湯でしっかりと洗い流す。
- 石鹸で洗う: 石鹸やボディソープで通常通り洗う。
この手順を踏めば、比較的すっきりと落とすことができる。
プロテクトJ1のラインナップと選び方

「プロテクトJ1」は、用途に合わせて選べるように複数の容量が用意されている。
基本的な成分や効果は同じである。
容量 | 特徴 | こんな人におすすめ |
15ml、35ml | 携帯性に特化した小さいサイズ。チューブタイプ。 | ・ブルベなどでの「追いJ1」用 ・初めて試してみたい人 ・旅行や遠征用 |
45ml、90ml | 自宅での普段使いと携帯性のバランスが良い標準サイズ。チューブタイプ。 | ・週末のロングライドがメインの人 ・自宅用と携帯用を一本で済ませたい人 |
150ml | 最もコストパフォーマンスに優れた大容量サイズ。チューブタイプ。 | ・頻繁にロングライドに行く人 ・家族やチームで共有したい人 |
筆者のおすすめは、自宅用に150mlを常備し、携帯用として35mlをツールケースに入れておくという組み合わせだ。これにより、あらゆる状況に対応できる万全の体制を整えることができる。
プロテクトJ1のよくある質問(Q&A)

Q. プロテクトJ1はどこで買えるのか?
A. 「プロテクトJ1」は全国のサイクルショップや、スポーツ用品店、Amazonや楽天市場などのオンラインストアで購入可能である。
Q. 使用期限はあるのか?
A. 明確な使用期限は記載されていないことが多いが、開封後はなるべく早く使い切ることが推奨される。
一般的に、未開封で3年、開封後は1年程度を目安にすると良いだろう。
古いものは成分が分離したり、効果が落ちたりする可能性がある。
Q. デリケートな部分に使っても大丈夫か?
A. 「プロテクトJ1」は皮膚への刺激が少ない成分で作られているが、粘膜など特にデリケートな部分への使用は避けるべきである。
また、傷や湿疹がある部位には使用しないこと。
肌が弱い人で心配な場合は、使用前に腕の内側などでパッチテストを行うことを推奨する。
Q. 塗った後のベタつきは気になるか?
A. 適量を守って塗れば、ベタつきはほとんど気にならない。
むしろサラッとした感触になるのが特徴だ。
もしベタつく場合は、塗る量が多すぎる可能性が高いので、次回から少し減らしてみると良いだろう。
まとめ:プロテクトJ1はロングライドの必需品といっても過言ではない!

「プロテクトJ1」は、単なる摩擦防止クリームではない。
それは、ロングライドやブルベといった過酷な挑戦において、サイクリストを皮膚トラブルという見えない敵から守ってくれる「装甲」のような存在である。
股ずれや靴擦れの痛みは、時に心を折り、ペダルを回す力を奪っていく。
しかし、ライド前にほんのひと手間かけるだけで、そのリスクを限りなくゼロに近づけることができるのだ。
筆者自身、この「プロテクトJ1」に何度も助けられ、多くの困難なライドを乗り越えてきた。
もしあなたが今、長距離ライドでの皮膚トラブルに悩んでいるのなら、ぜひ一度試してみてほしい。
きっと、これまで以上に快適で充実したサイクリングライフが待っているはずだ。
「プロテクトJ1」という頼れる相棒と共に、まだ見ぬ景色を目指してみてはいかがだろうか。