- ロードバイク初心者はどれくらいの距離を走れる?
- もっと遠くまで走るにはどうしたらいい?
ロードバイクを買ったばかりの頃、一体どれくらいの距離を走ればいいのか、見当もつかないのではないだろうか。
SNSを見れば「今日は軽く100km」という投稿が溢れているが、初心者がいきなり100kmを走るのは難しいし、体への負担も大きい。
そこで今回は、ロードバイクを長く楽しむために、初心者に適した距離の目安と、そこから徐々に距離を伸ばしていくためのステップを解説する。
この記事を読めば、今の自分が走るべき距離がわかり、さらに遠くへ走れるようになる具体的なコツが掴めるはずだ。
筆者は2015年にロードバイクを始めた。現在は600kmのブルベを完走し、SR(シューペル・ランドヌール)を取得するなどロングライドを中心に楽しんでいるが、最初はロングライドが大の苦手だった。 走り始めた頃は20km走っただけで脚が攣り、翌日は立ち上がれないほどの筋肉痛に悩まされた経験がある。 しかし、正しい手順で距離を伸ばすことで、無理なく100km、200kmと走れるようになった。 本記事ではその実体験も交えながら、初心者が安全かつ快適に距離を伸ばすための方法を解説していく。
この記事でわかること
- ロードバイク初心者に最適な距離の目安
- 距離を伸ばすために意識したい4つのポイント
ペース管理と心拍ゾーンを把握できて、無理なく走行距離を伸ばすのにサイクルコンピューターは導入しておきたいアイテムだ。
ロードバイク初心者にベストな距離
初心者はまず「10~30km」が最適

ロードバイクを買ったばかりの初心者は、まずは「10~30km」を目安に走ってみることを強くおすすめする。
なぜなら、体力的な問題以前に、まずはロードバイクという乗り物に体を慣らし、ブレーキ操作やギアチェンジの感覚を覚えることが最優先だからだ。
筆者の場合も、最初の30kmは近所の河川敷を往復するだけで、後半は脚が重くなった記憶がある。 だが、30km程度の距離を週2回ほど継続して走っていると、3週間ほどで体が慣れ、「50kmなら行けるかも」という感覚が自然と湧いてきた。
このように「筋力アップ」よりも「慣れ」こそが、距離を伸ばす最初の一歩だ。
10~30kmであれば、準備や休憩を含めても30分から2時間程度で走りきれる。
初心者のうちはサドルにお尻が慣れておらず、長時間乗ると痛みが強く出やすい。
お尻が痛くなる前に走り終えられる、このくらいの距離で「楽しかった」と感じて終わるのが継続のコツだ。

まずは「サイクリングロード」や「河川敷」など、信号や車が少ない安全な場所を選び、ゆっくりとロードバイクの挙動を楽しもう。
サイクリングロードや河川敷は車両止めやアップダウンがあって、ハンドリングやブレーキ、ギアチェンジのよい練習場所だ。
よって、初めは10~30kmを目安に走り、ロードバイクに慣れることから始めよう。
なお、スポーツ自転車に乗り始めた人が必ず直面するのが「お尻の痛み」だ。これは上級者でも起こり得ることだが、慣れや対策で大幅に軽減できる。詳しくは以下の記事で解説している。
お尻の痛みに悩んでいる人は、ロングライド向けのサドルを導入するとサクッと解決することもある。おすすめのサドルは下記記事で。
慣れてきたら50km、80km、そして100kmへ

ロードバイクの操作やポジションに慣れてきたら、次は50km、80kmと徐々に距離を伸ばしていく段階だ。
このくらいの距離が走れるようになると行動範囲は劇的に広がる。
隣町の美味しいパン屋や、景色の良い休憩スポットを目的地に設定できれば、ただ走るだけではないサイクリングの醍醐味を味わえる。
半日あれば十分楽しめる距離で、達成感もちょうど良い。
そして、多くのサイクリストが最初の目標とするのが「100km」だ。
100kmを走れる走力がつけば、各地で開催されているロングライドイベント(センチュリーライドなど)に参加して完走することも夢ではなくなる。
ロードバイク初心者が距離を伸ばすポイント4つ

ただ漫然とペダルを漕いでいるだけでは、ある距離から急に限界を感じたり、今まで以上に疲労困憊してしまったりすることがある。
ここからは、かつて20kmでバテていた筆者が、600km走れるようになるまでに実践した「距離を伸ばすための具体的なポイント」を4つ解説する。
距離を伸ばすポイント①ペースは「会話ができる程度」に抑える

長く走るためには、ペース配分が何よりも重要だ。
目安としては、息が上がらず「走りながら隣の人と会話ができる」程度の強度を維持しよう。
心拍計を持っている人なら、最大心拍数の60%前後が目安となる。
この強度(LSDなどと呼ばれる領域)を保つことで、脂肪を効率よくエネルギーに変え、疲れを溜めずに走り続けることができる。
これ以上の強度で走ってしまうと、糖質を激しく消費してしまい、後半にスタミナ切れを起こしてしまう。
これは私が今でもブルベを走る際に最も意識していることであり、初心者に限った話ではない。

ここで初心者に特に注意してほしいのは、「速度計(時速)」をペースの基準にしないことだ。
ロードバイクは風向きや路面の傾斜によって負荷が大きく変わる。
向かい風の中で時速25kmを維持しようとすれば、それは平坦無風の時速30km以上の負荷になることもある。
「前回と同じ速度が出ない」と焦って無理に踏む必要はない。
速度ではなく、自分の呼吸や心拍を目安にしよう。
ペース管理には、客観的な数値を示してくれるサイクルコンピューターが役立つ。無理なく距離を伸ばしたいなら、早めの導入をおすすめする。
距離を伸ばすポイント②一定ケイデンスを保てるギアチェンジを会得する

距離を伸ばす次のステップは、適切なギアチェンジだ。
足の回転数(ケイデンス)を一定に保つように意識して変速しよう。
重いギアを力任せに踏んだり、逆に軽すぎてお尻が跳ねたりするようなペダリングは、筋肉や心肺機能への負担が大きく、長距離には向かない。
目安としては「1分間に75~85回転(rpm)」を目標にしよう。
この回転数は、初心者にとって速すぎず、かつ脚の筋肉への負担と心肺機能への負担のバランスが良い。
坂道ではギアを軽くし、追い風では重くする。
こまめに変速を行い、常に足が同じリズムで回るように調整することが、疲れを残さないコツだ。
距離を伸ばすポイント③水分と補給食を忘れずに(ハンガーノック対策)

50km以上走るようになれば、水分補給だけでなく「エネルギー補給」が必須となる。
10~20km程度なら水だけで走れてしまうが、50kmを超えると消費カロリーは800kcal以上になることも珍しくない。
エネルギーが枯渇すると、急に力が入らなくなり、思考力が低下する「ハンガーノック(極度の低血糖状態)」に陥る。
これは、いわゆるガス欠だ。
ロードバイクは1時間でおよそ300~500kcalを消費すると言われている。
空腹を感じてからでは遅いので、1時間に1回、あるいは小まめに合計で100kcal程度の補給食を摂ることを意識したい。
筆者も初めて80kmに挑戦した際、補給を軽視して残り10kmで全く脚が動かなくなった経験がある。それ以来、一定時間ごとにジェルや羊羹を摂取することをルール化している。
特に「スポーツ羊かん」のように、片手で開封できて素早くエネルギーになるものは、ロングライドの強い味方だ。
ロングライド中も片手で素早くエネルギー補給ができる「スポーツ羊かん」は筆者もリピート買いするほど重宝している。
おすすめの補給食やタイミングについては、以下の記事も参考にしてほしい。
距離を伸ばすポイント④休憩は1時間に1回が目安

初心者のうちは、意識的に「1時間に1回」の休憩を取ろう。
慣れない前傾姿勢を長時間続けるのは体への負担が大きい。
信号待ちで止まるのとは別に、一度自転車から降りて体を伸ばす時間が重要だ。


ストレッチを行えば、血流が良くなり、ライド後の筋肉痛や肩こりの軽減にもつながる。また、安全に補給食を食べるタイミングとしても最適だ。
もし1時間に2回も3回も休憩が必要だと感じるなら、それは走るペースが速すぎる可能性がある。
ポイント①で触れたように、ペースを少し落としてみよう。
体力がつき、フォームが安定してくれば、自然と休憩の頻度は1.5時間に1回、2時間に1回と減っていくはずだ。
こちらの記事で時短テクニックについて説明しているので参考にしてほしい。
ロングライドを快適に走るための8つの対策【痛みを軽減】

距離が伸びるにつれて、手のひら、お尻、肩などの痛みが悩みになることがある。
以下の記事では、ロングライド特有の痛みを軽減し、一日中快適に走るための具体的なノウハウをまとめている。ぜひ参考にしてほしい。
ロードバイクの距離に関するよくある質問(Q&A)

ここでは、ロードバイクの距離に関して、初心者が抱きがちな疑問に回答する。
Q1. 全くの初心者から100km走れるようになるまで、どれくらいの期間が必要か?
A. 週末ライダーなら3ヶ月〜半年がひとつの目安だ。
もちろん個人差はあるが、週に1〜2回のライドを継続していれば、3ヶ月程度で基礎体力がつき、お尻の痛みにも慣れてくる。
最初は30kmから始め、50km、80kmと段階を踏んでいけば、半年後には100km完走も決して非現実的な目標ではない。
焦らず継続することが最短の近道となる。
Q2. 毎日走った方が早く距離を伸ばせるのか?
A. 無理に毎日走る必要はない。休息もトレーニングの一部だ。
初心者がいきなり毎日乗ると、疲労が抜けず、膝や腰を痛める原因になりかねない。
筋肉は休んでいる間に修復され、強くなる(超回復)。
特にロングライドを目指すなら、距離を乗った翌日はしっかりと休養を取ることも大切だ。
まずは週2回程度、週末にしっかり楽しむペースで十分成長できる。
Q3. 体力に自信がない(貧脚な)女性や年配者でも長距離は走れるか?
A. 全く問題ない。ロードバイクは機材スポーツであり、コツさえ掴めば誰でも走れる。
ロードバイクの素晴らしい点は、機材の力で体力をカバーできることだ。
軽いギアを使い、適切なペース配分と補給を行えば、体力に自信がなくても100km程度なら十分に完走できる。
筆者の周りでも、定年後にロードバイクを始めてブルベ(200km以上)を楽しんでいる人は大勢いる。
まとめ:初心者が走れる距離をどんどん伸ばして、もっと楽しもう!

今回の記事ではロードバイク初心者に最適な距離と、距離を伸ばすためのポイントを解説した。
まとめ
- まずは10~30km: ロードバイクの操作と感覚に慣れることが最優先。
- 徐々に距離を伸ばす: 慣れてきたら目的地を決めて、50km、80kmとステップアップしよう。
- 距離を伸ばす4つの鉄則:
- 会話ができるペースで走る
- 一定のケイデンス(75-85rpm)を維持する
- 水分とエネルギーを先回りして補給する
- 1時間に1回は休憩し、自転車から降りる
ロードバイクはママチャリとは違い、自分の力だけで驚くほど遠くまで行ける乗り物だ。
最初は不安や体の痛みもあるかもしれないが、正しい知識と少しの工夫で、走れる距離は確実に伸びていく。
かつて20kmで力尽きていた筆者が600kmを走れるようになったように、あなたもきっと遠くまで走れるようになるはずだ。
この記事が、あなたの自転車ライフを広げるきっかけになれば幸いである。














