ロードバイクのハンドル周りは、できるだけシンプルで美しく保ちたい。
これは多くのサイクリストが抱く共通の願いであろう。
サイクルコンピューターやライトなど、必要最低限の機材で構成されたコックピットは、それだけで気分を高揚させる力がある。
そんな時、ふと頭をよぎるのが「ベル」の存在だ。
正直なところ、あまり格好良いとは言えないし、重量も増える。
しかし、ロードバイクへのベルの取り付けは、単なるマナーの問題ではなく、法律で定められた「義務」なのだ。
ロードバイクの洗練されたデザインを損なわないスタイリッシュなもの、心地よい音色を奏でるもの、驚くほど軽量でコンパクトなものなど、選択肢は非常に幅広い。
もはやベルは「仕方なく付けるもの」ではなく、「こだわって選びたいアクセサリー」の一つになったと言えるだろう。
この記事では、ベルの必要性という基本から、後悔しないための選び方、そして筆者が実際に試した経験も踏まえたおすすめの製品まで、徹底的に解説していく。
この記事でわかること
- ロードバイクにベルが必要な法的根拠と安全性における役割
- 失敗しないロードバイク用ベルの選び方【5つの重要ポイント】
- デザイン・音色・機能性などタイプ別のおすすめベル10選
- ベルの取り付け位置や正しい使い方に関する疑問解決
なぜロードバイクにベルが必要なのか?

デザイン性を重視するあまり、ベルを付けていないロードバイクを見かけることは少なくない。
しかし、なぜベルは必要不可欠なのだろうか。
その理由は「法律」と「安全」という、非常に重要な二つの側面から説明できる。
道路交通法上の義務である
まず知っておくべきは、ベルの装着が道路交通法によって定められた義務であるという事実だ。
道路交通法 第五十四条(警音器の使用等) 車両等(自転車以外の軽車両を除く。)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。 (中略) 2 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
この条文にある「警音器」が、自転車におけるベルに該当する。
つまり、「警笛鳴らせ」の道路標識がある場所ではベルを鳴らす義務があり、それ以外の場所でむやみに鳴らすことは禁止されているのだ。
ただし、但し書きにある通り「危険を防止するためやむを得ないとき」は使用が認められている。
装備していなければ、そもそも法律を守ることができない。
整備不良として取り締まりの対象になる可能性もゼロではないのだ。
筆者はロードバイク歴10年であるが、正直ベルを鳴らしたことはない。しかし、法律上必須装備であるし、もしもの時のために装着している。
ロードバイク用ベルの選び方【4つのポイント】

では、実際にどのような基準でベルを選べば良いのだろうか。
ここでは、筆者の失敗談も交えながら、5つの重要な選定ポイントを解説する。
①取り付け方法と場所で選ぶ
ロードバイクのハンドル周りは、サイコン、ライト、スマートフォンホルダーなど、すでに多くのアクセサリーで混雑していることが多い。
ベルを選ぶ際は、自分のハンドル周りのどこに取り付けるかを事前にシミュレーションしておくことが重要だ。
取り付け方法は、主に工具不要の「バンド式(シリコン・ゴム)」と、工具で固定する「ネジ式」がある。
バンド式は手軽に着脱できるが、経年劣化で切れる可能性もある。
ネジ式はしっかりと固定できる安心感がある。
筆者の失敗談として、デザインだけで選んだベルが、愛用しているサイコンマウントと干渉してしまい、取り付けられなかったことがある。
また、ハンドルバーの径(太さ)に対応しているかも必ず確認が必要だ。
一般的なドロップハンドルは中央部が太く(31.8mm)、ブレーキレバーに近づくにつれて細く(23.8mm前後)なっている。
購入しようとしているベルが、自分が取り付けたい場所の径に対応しているか、事前にチェックしておくことが後悔しないためのコツである。
②デザインと素材で選ぶ
性能はもちろん重要だが、愛車のルックスを損ないたくないのがサイクリストの本音であろう。
幸い、現代のベルはデザイン性が非常に高い。
まるで指輪のようにハンドルバーに馴染むものや、ミニマルで洗練されたデザインのものなど、選択肢は豊富だ。
車体のカラーに合わせて選ぶのも良いだろう。
素材も重要な要素である。
主な素材とその特徴は以下の通りだ。
素材 | 特徴 |
真鍮 (Brass) | 澄んだ高音で余韻が長い。クラシカルで美しい見た目。 |
アルミニウム (Aluminum) | やや軽やかで歯切れの良い音色。軽量でカラーバリエーションが豊富。 |
樹脂 (Plastic) | 軽量で安価。音色は金属製に劣る場合が多い。 |
音色とルックスの両方に影響するため、デザインと素材はセットで検討するのがおすすめだ。
③操作性で選ぶ

ベルは、いざという時に瞬時に鳴らせなければ意味がない。
特に、ブラケットを握っている時や、下ハンドルを握っている時など、様々な乗車姿勢からでもスムーズに指が届く位置にあり、かつ軽い力で操作できることが理想だ。
操作方法は、指でレバーを弾くタイプが主流だが、ハンマー部分を叩くタイプなど様々である。
筆者は以前、デザイン重視で非常にコンパクトなベルを使用していたが、レバーが小さすぎてグローブをしていると操作しづらく、結局別のモデルに買い替えた経験がある。
自分の手の大きさや、普段ハンドルを握るポジションを考慮して、最も自然に操作できるものを選ぶべきだ。
④重量で選ぶ
1gでもバイクを軽くしたい、と考えるヒルクライマーや本格的なライダーにとって、重量は無視できない要素だ。
ベルの重量は、軽いものでは20g以下、重いものでも50g程度が一般的である。
もちろん、数グラムの差が走りに劇的な影響を与えるわけではない。
しかし、パーツ一つ一つにこだわり、軽量化を突き詰めることもロードバイクの楽しみ方の一つだ。
特にこだわりがなければ気にする必要はないが、もし軽量性を重視するのであれば、製品スペックの重量欄をチェックしておくと良いだろう。
【タイプ別】ロードバイクにおすすめのベル8選

ここからは、上記の選び方を踏まえ、筆者が実際に使用したり、評価が高かったりするおすすめのベルをタイプ別に紹介していく。
スタイリッシュさで選ぶならこの3選
ロードバイクの美観を何よりも重視するライダーにおすすめのモデルだ。
1. Knog (ノグ) Oi Classic / Oi Luxe
- 特徴: ベルの常識を覆した、指輪のような革新的なデザイン。ハンドルバーに沿うようにフィットするため、目立たず非常にスタイリッシュだ。音色にもこだわっており、Luxeモデルはより重厚で響きの良い音を奏でる。
- メリット: 圧倒的なデザイン性。ハンドル周りがごちゃごちゃしない。
- デメリット/注意点: 取り付け位置の自由度がやや低い。ケーブル類をまとめる溝があるが、配線によっては取り付けにくい場合がある。
- 筆者コメント: これを付けてから「そのベル、どこの?」と聞かれることが非常に増えた。まさに「見せたくなるベル」の代表格である。所有欲を満たしてくれる逸品だ。
2. SPURCYCLE (スパーサイクル) Bell
- 特徴: 「Made in USA」にこだわった高級ベル。精密な作りと、驚くほど長く響き渡る澄んだ音色が唯一無二。素材はステンレススチールと真鍮で、耐久性も非常に高い。
- メリット: 何度も鳴らしたくなるほどの美しい音色。一生モノと言えるほどの高品質。
- デメリット/注意点: 価格が他のベルに比べて高価。
- 筆者コメント: 価格に見合うだけの価値は間違いなくある。ライドの度にこの音色を聞けると思えば、決して高い買い物ではないかもしれない。本物志向のライダーにおすすめだ。
3. GUEE (グイー) b-Copper
- 特徴: 銅製のクラシカルなデザインが特徴。コンパクトながら、非常にクリアで大きな音が出る。取り付けもシンプルなバンド式で工具不要。
- メリット: ヴィンテージ感のあるおしゃれなデザイン。見た目以上の音量。
- デメリット/注意点: バンドの耐久性は永久ではないため、定期的なチェックが必要。
- 筆者コメント: クロモリフレームのバイクや、クラシカルなカスタムをしているバイクとの相性は抜群だ。銅ならではの経年変化も楽しめる。
音色と響きで選ぶならこの3選
ベル本来の役割である「音」にこだわりたいライダー向けのモデル。
4. CATEYE (キャットアイ) OH-2400
- 特徴: 日本が世界に誇るサイクルアクセサリーブランド、キャットアイの真鍮製ベル。小型ながら「リーン」と長く響く美しい音色が特徴。信頼の日本製で、品質も安定している。
- メリット: 手頃な価格で高品質な真鍮ベルが手に入る。コンパクトで目立たない。
- デメリット/注意点: デザインは非常にシンプルなので、装飾性を求める人には向かない。
- 筆者コメント: 質実剛健とはこのことだ。迷ったらまずこれを選んでおけば間違いない、という安心感がある。コストパフォーマンスが非常に高いモデルだ。
5. 東京ベル製作所 ダイヤモンドベル
- 特徴: 昔ながらのレトロなデザインが魅力のベル。名前の通り、ダイヤモンドのような形状をしている。真鍮製で、どこか懐かしさを感じる温かい音色を奏でる。
- メリット: 手頃な価格。クラシカルで個性的なデザイン。
- デメリット/注意点: やや大きいと感じる人もいるかもしれない。
- 筆者コメント: 最新のカーボンバイクには似合わないかもしれないが、ツーリングバイクや街乗り用のバイクには不思議とマッチする。音色も優しく、歩行者を驚かせにくい。
6. LEZYNE (レザイン) CLASSIC BRASS BELL
- 特徴: CNC加工された美しいデザインで知られるLEZYNEの真鍮ベル。モダンでありながらクラシカルな雰囲気も併せ持つ。高音でキレのある音色が特徴。
- メリット: LEZYNE製品らしい高級感のあるデザイン。複数のサイズ展開がある。
- デメリット/注意点: 取り付けバンドがOリングなので、サイズ選びがシビア。
- 筆者コメント: LEZYNEのライトやポンプとデザインを統一すると、ハンドル周りに一体感が出て非常に美しい。音もデザインも妥協したくない人向けだ。
ユニークな機能性で選ぶならこの2選
他とは一味違う、プラスアルファの機能を持つモデル。
7. CLOSE THE GAP (クローズザギャップ) HideMyBell
- 特徴: サイクルコンピューターマウントとベルが一体化した画期的な製品。ハンドル周りを究極にスッキリさせることができる。各種サイコンマウントに対応するアダプターも豊富。
- メリット: ハンドル周りの省スペース化。スマートな見た目。
- デメリット/注意点: 価格が高め。ベル単体での交換はできない。
- 筆者コメント: ハンドル周りの美学を追求するライダーが行き着く一つの答えだ。ベルの取り付け場所に悩む必要がなくなるのは大きなメリットである。
8. anlan (アンラン) AirTag内蔵可能ベル
- 特徴: ベルの内部にAppleのAirTagを隠して内蔵できるという、防犯機能を兼ね備えたベル。万が一の盗難時に、自転車の位置を追跡できる可能性が高まる。
- メリット: 盗難対策になるという安心感。
- デメリット/注意点: AirTag本体は別売り。ベルとしての音質やデザインは標準的。
- 筆者コメント: 高価なロードバイクに乗る上で、盗難は最大の心配事の一つだ。お守り代わりにこのベルを付けておく、という選択は非常に賢明である。
ロードバイクのベルに関するQ&A

ここでは、多くのライダーが抱くベルに関する素朴な疑問について回答していく。
Q1. ベルの取り付け位置はどこがいい?
A. 最も一般的で推奨されるのは、利き手側の、ブレーキレバーのすぐ内側だ。
ブラケットポジションを握ったまま、親指で自然に操作できる位置がベストである。
他にも、ステムの横に取り付けたり、フラット部分に取り付けたりする方法もある。
重要なのは「走行中に視線を大きく動かさず、安定した姿勢のまま、瞬時に鳴らせる位置」であることだ。
自分のライディングスタイルに合わせて、色々な場所を試してみるのが良いだろう。
Q2. ベルを鳴らすのはどんな時?マナー違反にならない?
A. 法律上は「警笛鳴らせ」の標識がある場所と「危険を防止するためやむを得ないとき」に限られる。
歩行者の背後から驚かせるように鳴らすのは、明確なマナー違反であり、場合によっては相手を危険な状況に追い込むことさえある。
後方から追い越すような場合は、速度を落とし、声かけをするのが良い。
Q3. ベルの代わりに声で知らせるのはダメ?
A. 法律(道路交通法)では「警音器」の装備が義務付けられている。
そのため、声かけが有効な場面は多いものの、声が警音器の代わりになるわけではない。
つまり、ベルを装備せずに声だけで済ませる、というのは法律違反となる。
必ずベルを装備した上で、状況に応じて声かけと使い分けるのが正しい理解だ。
Q4. ベルのメンテナンスは必要?
A. 基本的に頻繁なメンテナンスは不要だが、長く使っているとホコリや雨水などで動きが渋くなることがある。
可動部に砂などが詰まっていたら取り除き、たまに少量(一滴で十分)の潤滑油を注してやると、スムーズな動きと美しい音色が長持ちする。
また、ネジ式のものは緩んでいないか定期的に確認すると良いだろう。
まとめ:お気に入りのベルで安全・安心なライドを!

ロードバイクにおけるベルは、決して単なる飾りではない。
それは、法律上の義務であり、あなたと周囲の人の安全を守るための、極めて重要な保安部品なのだ。
かつては「格好悪いから付けたくない」という選択肢もあったかもしれない。
しかし、本記事で紹介したように、現代にはロードバイクの美観を損なわない、デザイン性と機能性を両立した優れたベルが数多く存在する。
デザイン、操作性、重量など、様々な観点から自分に合ったベルを吟味する時間は、新しいパーツを選ぶのと同じくらい楽しいひとときである。
ぜひ、あなただけのお気に入りのベルを見つけ出し、それを自信を持ってハンドルに取り付けてほしい。