ロードバイクでのロングライド、特にブルベのような超長距離を走り切った時の達成感は格別だ。
筆者自身も2015年にロードバイクを始め、今では600kmブルベを完走するまでになったが、楽に、そして確実に完走するために「心拍数管理」は絶対に欠かせない要素だと痛感している。
ペースがわからず前半で飛ばしすぎて後半失速したり、不要な疲労を溜め込んでしまったり…。あなたもそんな経験はないだろうか?
心拍数管理をマスターすると、エネルギーを温存し、疲労を最小限に抑えながら、「楽に」「安定して」走り続けることが出来るようになる。
本記事では、筆者のブルベ経験も踏まえ、ロングライドを楽に完走するための具体的な心拍数管理の目安と、4つの実践的なポイントを解説する。
この記事でわかること
- ロードバイクで心拍管理が「なぜ」重要なのか?
- 基準となる「心拍数ゾーン」の目安と活用法
- 楽に走るための「心拍数管理」実践4つのコツ
- ロードバイクの心拍数管理Q&A
ロードバイクにおける心拍数管理の「本当の」重要性

心拍数は、あなたの体が「今どれくらいの負荷を感じているか」を示すひとつの指標となる。
ロングライドの場合、心拍数を適切に管理することで、走行ペースを維持し、疲労を最小限に抑えることが可能だ。
しかし、心拍数の管理ができていないと、後半にペースが落ちてきたり、完走は出来ても思ったより時間がかかってしまう。
心拍数管理ができていないと…
- 後半の劇的な失速: 序盤にエネルギー(特に糖質)を使い果たし、後半は力が出なくなる
- 異常な疲労感: 筋肉だけでなく、心肺機能にも過度な負担がかかり、回復に時間がかかる
- 完走時間の増大: ペースが安定せず、結果的に休憩時間が増えたり、走行ペースが落ちたりして時間がかかる
- 身体の痛み: 無駄な力みは、尻、腰、腕への負担を増やし、痛みの原因にもなる
特にブルベのような超長距離では、「エネルギー(グリコーゲン)の温存」が完走の絶対条件。
心拍数が高い状態(ゾーン3以上)を続けると、エネルギーの消費効率が急速に悪化し、あっという間に「ガス欠(ハンガーノック)」になってしまう。

一方で、心拍数が低すぎるのも問題だ。
「ゾーン1」やそれ以下で走り続けると、確かに楽だが、ペースが遅すぎて手やお尻に体重が集中し、かえって痛みが出ることがある。
また、ロングライドでは「帰宅時間」や「宿泊するホテルのチェックイン時間」、ブルベでは「制限時間」というもう一つの敵がいる。
楽をしすぎても完走は遠のいていく。
つまり、ロングライドにおける心拍数管理とは、「エネルギー消費を最適化し、疲労を最小限に抑えつつ、制限時間内に確実に完走するためのペース配分術」である。
心拍数ゾーンとは?

心拍数は、運動強度によっていくつかの「心拍数ゾーン」に分けられる。
これは、運動強度を最大心拍数(MHR: Max Heart Rate)に対する割合で区分けしたもの。
これらのゾーンを理解し、自分の体調に合わせたペースでライドを行うことが、ロングライド成功のカギとなる。
以下は代表的な心拍数ゾーンで、赤色下線がロングライドに適した心拍数ゾーンだ。
心拍数ゾーン
- ゾーン1(回復ゾーン):心拍数が最大心拍数の50〜60%。軽い運動で回復に最適。ウォームアップやクールダウン、超長距離での「脚を休ませる」区間に。
- ゾーン2(脂肪燃焼ゾーン):最大心拍数の60〜70%。長時間の運動を支える持久力向上に役立つ。会話が楽にできる強度。
- ゾーン3(有酸素運動ゾーン):最大心拍数の70〜80%。心肺機能の向上に効果的。
- ゾーン4(無酸素運動ゾーン):最大心拍数の80〜90%。高強度の運動でスピードやパワー向上を目指す。
- ゾーン5(最大努力ゾーン):最大心拍数の90〜100%。非常に高強度の運動で短時間でのパフォーマンス向上。
ロングライドの鍵は「ゾーン2」
ロングライド、特にブルベでは、走行時間の大半を「ゾーン1」「ゾーン2」で走ることを意識して走ろう。
これにより、エネルギー消費を抑え、疲労の蓄積を防ぐことができる。
ゾーン3は短期的には速いが、エネルギー切れのリスクが非常に高まり、ライド後半の失速につながる。
注意:最大心拍数の目安「220-年齢」は万能ではない
心拍ゾーンを計算するには、まず「最大心拍数」を知る必要がある。
よく使われる「220-年齢」という計算式は、あくまで簡易的な目安だ。
筆者の経験上、これと実測値が大きく異なる人は少なくない。
まずは「220-年齢」で設定してみて、ライド中に「会話ができるギリギリのライン(ゾーン2の上限)」「ややキツイと感じ始めるライン(ゾーン3の下限)」という体感と心拍数を照らし合わせて、自分の感覚を掴むことから始めるのが現実的だ。
ロードバイクの心拍数管理法|実践4つのコツ
では、具体的にどう管理すればよいか、4つの実践的なコツを紹介する。
ロードバイクの心拍数管理①心拍数計を導入し「可視化」する【必須】

ロングライド中に自分の心拍数をリアルタイムで確認できるよう、サイコン(サイクルコンピュータ)と心拍数計を導入しよう。
心拍数の管理は「体感」だけでは困難だ。
体調や興奮状態で体感ズレるため、サイコンで客観的な数値で把握することが重要だ。
活用のポイント
- リアルタイム確認: 「今、無理をしていないか?」を数値で即座にチェック
- ゾーン表示: 多くのサイコンでは、現在の心拍数がゾーン1~5のどこにあるかを視覚的に表示
- アラート機能: 「心拍数が150bpm(例:ゾーン3の上限)を超えたらアラームを鳴らす」といった設定を活用すると、無意識のオーバーペースを防げる
これにより、過度に心拍数が上がりすぎている場合や、逆にペースが遅すぎる場合に調整できる。
サイコンを持っていないなら、セットで心拍数計も入っているものが割安でお得。
ロードバイクの心拍数管理②ペースを調整して「序盤は抑え、中盤から維持」

ロングライドでは、序盤にペースを無理に上げすぎないことが重要。
最初から速いペースで走ると、後半で疲労が蓄積し、心拍数が急激に上昇してしまう可能性がある。
筆者の場合は、例えば200kmブルベを走るときは下記のようにペースを調整している。
- 前半(0~100km):心拍数を最大心拍の60%以内に収める
- 後半(100~200km):心拍数を最大心拍の70%程度で走る
- ヒルクライム時:心拍が上がりやすいが、なるべく心拍数プラス10bpmで収める
自分の心拍数ゾーンを意識し、ライド全体を通して安定したペースを保つようにしよう。
心拍数に関係性があるペダルの回転数「ケイデンス」については以下の記事で解説しているので参考に!
ロードバイクの心拍数管理③登り坂は絶対に頑張らない

ロングライドの成否は「登り坂の走り方」で決まると言っても過言ではない。
平地ではゾーン2を維持できていても、登り坂では重力に逆らうため、心拍数は一気に跳ね上がる。
ここで頑張りすぎると、一気にゾーン4(無酸素運動域)に入ってしまう。
ゾーン4に入ると、エネルギー源がほぼ糖質(グリコーゲン)だけになり、疲労物質(乳酸)も急激に蓄積する。
これは、「貯金を一気に切り崩している」状態であり、ロングライドでは致命的だ。
筆者の場合は、その時の狙っている心拍数の「プラス10bpm」を超えないように、走行不可を調整している。
登り坂ではスピード・ペースを抑えて、頑張りすぎないようにしよう。
ロードバイクの心拍数管理④「休みすぎない」ことも心拍管理のうち

ロングライドでは補給や休息が不可欠だが、その「取り方」にも心拍数管理の視点が必要だ。
頻繁に長時間の休憩(例:30分以上)をとると、身体が完全に「リラックスモード」に入り、筋肉が冷え、心拍数も下がってしまう。
この状態から再び走り出すと、心拍数を走行状態(ゾーン2)まで戻すのに大きなエネルギーが必要となり、「異常に疲れる」と感じる。
休憩のコツ
- 「休憩時間」: 目安は10~15分程度。食事を摂る場合でも、座り込んでリラックスしすぎないことが重要
- 「ダラダラ休まない」: 休憩は「補給」「トイレ」「装備調整」など目的を明確にし、テキパキと済ませる
休憩時のおすすめのコスパ最強補給食は「かし原の塩羊かん」。
注意すべき現象「心拍ドリフト」とは?

ロングライドの後半、特に暑い日や疲労が溜まってきた時に、「走るペース(出力)は同じなのに、心拍数だけがジワジワと上がってくる」という現象が起こることがある。
これは「心拍ドリフト(Cardiac Drift)」と呼ばれている。
これは、主に以下の要因によって引き起こされる。
- 脱水: 汗で体内の水分が失われると、血液が濃縮し、それを全身に送るために心臓(心拍)が余計に働かなければならない
- 体温上昇: 体温が上がると、皮膚に血液を送って体を冷やそうとするため、心臓の負担が増える
- 疲労: 長時間の運動による疲労そのものも、心拍数を上昇させる
心拍ドリフトへの対策
心拍ドリフトが始まったら、「根性」でペースを維持しようとしてはいけない。
- こまめな水分・電解質補給: 最も重要な対策。喉が渇く前に飲むことを徹底する
- ペースの微調整: 上昇してきた心拍数を基準(例:ゾーン2の上限)に戻すため、意識的にペースを少し落とす
- 体温管理: 暑い日は首筋や頭に水をかけるなどして、体を冷却する
この現象を知っておくだけでも、「後半、心拍が下がらない」と焦る必要がなくなる。
ロードバイクの心拍数管理 Q&A

最後に、ロングライドの心拍数管理に関してよくある質問をまとめる。
Q1. 心拍計は胸(乳バンド)と腕(アームバンド)、どちらが良いですか?
A1. 精度を最優先するなら「胸(乳バンド)式」、手軽さや装着感の快適さを優先するなら「腕(アームバンド)式」がおすすめです。
- 胸式: 心臓に近い位置で電気信号を直接拾うため、精度が最も高い。ただし、装着の煩わしさや、汗によるズレ、締め付け感が苦手な人もいる。
- 腕式(光学的): 腕の血流を光で読み取るため、手軽だ。最近は精度が向上しているが、激しい運動や装着位置のズレで数値が飛ぶことがある。
筆者も様々なタイプを試したが、現在は手軽なアームバンド式を愛用している。
Q2. 「220-年齢」で計算したゾーンが、体感と全く合いません。
A2. よくあることだ。
「220-年齢」は統計的な平均値にすぎず、個人差が非常に大きい。
体感とズレる場合は、「体感」を優先すべき。
「ゾーン2(60-70%)」のはずなのに息が切れるなら、あなたの最大心拍数は計算値より低い可能性がある。
徐々に自分の「楽に走り続けられる心拍数」を見つけて、それを基準(ゾーン2)として設定し直すことをおすすめする。
Q3. 信号待ちなどで心拍数が下がった後、再スタートがキツイです。
A3. これは「④休憩」の項目で解説した、筋肉が冷えて心拍が下がりすぎた状態と同じだ。
再スタート時は、いきなり元のペースに戻そうとせず、軽いギアでケイデンスを上げ(回し)ながら、徐々に心拍数をゾーン2まで戻していくように意識すると、身体への負担が少ない。
Q4. ロングライドの後半、とても疲れているのに心拍数が上がりません。
A4. これは「深刻な疲労」または「ハンガーノック(エネルギー枯渇)」のサインである可能性が高い。
体がエネルギー不足や極度の疲労状態になると、心臓を動かす機能自体が低下し、運動強度を上げようとしても心拍数が上がらない状態になる。
この状態になったら、無理をせずペースを落とし、すぐに補給(特に糖質)を摂ろう。
必要であれば安全な場所で短時間の休憩を取り、回復を待つ。
まとめ:ロードバイクの心拍数管理は「感覚」ではなく「技術」である!

ロードバイクでのロングライドをより楽しく、かつ速く走るためには、心拍数の管理が不可欠。
自分の心拍数ゾーンを意識して、ペースを調整しながらライドを楽しもう。
ロードバイク心拍管理のまとめ
- 「ゾーン2」を基本に走る: エネルギー消費を抑え、疲労を最小化する。
- 序盤は徹底して抑える: 元気な時ほど心拍数を(Z2上限以下に)抑える。
- 登り坂で頑張らない: ゾーン3上限(またはZ4)に入れないことを徹底する。
- 心拍ドリフトを警戒する: 水分補給とペース調整で対処する。
- 休憩は短く、効率的に: 心拍を落としすぎない。
心拍数計を活用し、無理をせずに適切な休憩を取りながら走ることで、ロングライドをより安全で充実したものに!
心拍数計のなかでも筆者のおすすめは、「アームバンド式(腕計測)」のもの。「【腕計測】アームバンド式心拍計はどうなのか?|メリット・デメリットとおすすめ製品【ロードバイク】」で解説しているのでより快適に心拍数を測りたい人は参考にしてほしい。








