ロードバイクに乗り始めたばかりの頃、多くのサイクリストが一度は「サングラスって本当にいるの?」という疑問を抱くものである。
街中を颯爽と走るライダーたちの大きなサングラスは、確かに本格的で格好良い。
しかし、一方で「見た目が大げさで気恥ずかしい」「わざわざお金をかけるほどでもない」と感じる気持ちも理解できる。
筆者自身も、最初はサングラスなしで走っていた時期があった。
だが結論から言えば、ロードバイクにおいてサングラスは「いらない」どころか、ヘルメットと同レベルで重要な「必須装備」である。
この記事では、なぜサングラスが必要不可欠なのか、その理由をロードバイク歴10年の筆者の体験談も交えながら多角的に解説していく。
この記事でわかること
- ロードバイク用サングラスが「いらない」と感じる理由とその誤解
- サングラスなしで走行することの具体的な危険性
- 目を守るためにサングラスが絶対に必要な理由
- 後悔しないためのロードバイク用サングラスの選び方
筆者が所有している「オークリー ジョウブレイカー」は、独自のプリズムロードレンズが路面の凹凸を視認し訳すしてくれるオススメのロードバイク用サングラス。
なぜロードバイクのサングラスは「いらない」と感じてしまうのか?
多くのサイクリストが、最初はサングラスの必要性に懐疑的である。
その背景には、いくつかの共通した心理や誤解が存在する。
理由1: 見た目が大げさで気恥ずかしい

ロードバイク用のサングラスは、顔の半分を覆うような大きなデザインが多い。
まるでスキーのゴーグルのようだ。
特に初心者のうちは、自分のスキルや装備がその「本格的な見た目」に見合っていないように感じ、気恥ずかしさを覚えることがあるのだ。
普段使いのファッションサングラスとはかけ離れたその形状に、抵抗を感じるのは自然なことかもしれない。
筆者も、初めてサイクルジャージとヘルメットを身に着けた時のような、独特の気恥ずかしさをサングラスに対しても感じていた。
理由2: 価格が高い、コストをかけたくない

ロードバイクは、車体以外にもヘルメット、ウェア、シューズなど、揃えるべきアイテムが多い。
一つ一つは高価であり、できるだけ出費は抑えたいと考えるのが人情である。
有名ブランドのサングラスは数万円することも珍しくなく、「たかがサングラスにそこまで…」と、優先順位が低くなりがちなアイテムの一つなのだ。
まずは走るための最低限の装備を揃えるのが先で、サングラスは後回しにされやすい。
理由3: 視界が暗くなる、歪んで見えるのが嫌だ

サングラスをかけると、当然ながら視界はある程度暗くなる。
特に安価な製品や、用途に合っていないレンズカラーのものを選ぶと、必要以上に視界が暗くなったり、視界が歪んで見えたりすることがある。
これが原因で、かえって走行に不安を感じ、「ない方がマシだ」という結論に至ってしまうケースだ。
トンネルに入った瞬間に真っ暗になる経験をすれば、そう感じるのも無理はない。
理由4: 汗で汚れたり、曇ったりするのが不快

サイクリング中は大量の汗をかく。
その汗がレンズに垂れて視界を妨げたり、停車した際に呼気でレンズが真っ白に曇ったりするのは、非常に不快なものである。
走行中に何度もサングラスを外して拭くという作業は、集中力を削ぎ、ストレスの原因にもなる。
こうした煩わしさから、次第にサングラスをかけるのが億劫になってしまうのだ。
理由5: 短距離や街乗りだから必要ないと思っている

「本格的なロングライドならまだしも、近所のサイクリングロードを少し走るだけ」「通勤で街中を走るだけ」といった理由で、サングラスを不要だと判断している人も多い。
走行時間が短く、速度もそれほど出さないため、紫外線や飛来物のリスクを軽視してしまう傾向がある。
しかし、危険は距離や場所を選ばないという事実を、この時点ではまだ知らないのである。
それでもサングラスは必要!「いらない」では済まされない5つの危険性
前述の「いらない」と感じる理由は、いずれもサングラスの持つ本質的な重要性を理解すれば解消できるものばかりである。
サングラスをかけずに走る行為は、自ら進んで多くの危険に身を晒しているのと同じなのだ。
危険性1: 紫外線による深刻な眼病リスク

我々が地上で浴びる紫外線には、主にUV-AとUV-Bの2種類がある。
肌の日焼けだけでなく、目にも深刻なダメージを与えることはあまり知られていない。
長時間、無防備な目で紫外線を浴び続けることは、白内障や翼状片といった眼病の発症リスクを高めることが医学的に指摘されているのだ。
ロードバイクでの走行は、長時間にわたって屋外で太陽光に晒される行為である。
「UV400」といった表示のあるサングラスは、こうした有害な紫外線を99%以上カットする性能を持っている。
これは単なる眩しさ対策ではなく、将来の目の健康を守るための、極めて重要な投資なのである。
危険性2: 予期せぬ飛来物による物理的な目の損傷

走行中、我々の目には様々なものが飛び込んでくる可能性がある。
小さな虫、舞い上がった砂埃、前の自転車が跳ね上げた小石、突然の雨粒など、その種類は様々だ。
これらがもし高速で走行中に直撃したらどうなるだろうか。
筆者は一度、サングラスなしで河川敷を走行中、小さな羽虫の群れに突っ込んでしまい、数匹が目に入ったことがある。 激痛と涙で視界が奪われ、咄嗟に急ブレーキをかけたが、後続車がいたらと思うと今でも背筋が凍る思いだ。
サングラスは、こうした物理的な脅威から目を守るための、最後の盾となる。
危険性3: 風の巻き込みによるドライアイと集中力の低下

ロードバイクはある程度の速度で走行するため、常に風圧に晒されることになる。
サングラスなしで走り続けると、風が直接目に当たり、涙が乾いてドライアイを引き起こす。
目が乾くと、しょぼしょぼしたり、痛みを感じたりして、ライディングへの集中力が著しく低下する。
特に長距離を走る場合、この集中力の低下は安全な走行を妨げる大きな要因となる。
カーブの多いロードバイク用のサングラスは、顔の形状に沿って風の巻き込みを最小限に抑えるように設計されているのだ。
危険性4: 眩しさによる視界不良と判断の遅れ

晴れた日のアスファルトからの照り返し、木漏れ日の中の明暗の急激な変化、トンネルの出口で突然浴びる強烈な光。
こうした眩しさは、一瞬にしてサイクリストの視界を奪う。
視界が眩むコンマ数秒の間に、路面の危険なギャップや障害物を見落とすかもしれない。
前方の歩行者や自動車の発見が遅れるかもしれない。
この一瞬の判断の遅れが、重大な事故につながる可能性があるのだ。
適切なレンズカラーのサングラスは、こうした眩しさを効果的に軽減し、常にクリアで安定した視界を確保してくれる。
危険性5: 落車時などアクシデントからの顔面保護

考えたくはないが、ロードバイクに落車のリスクはつきものである。
ヘルメットが頭部を守るように、サングラスは落車時に顔面、特に最もデリケートな眼球周辺を保護する役割を果たす。
地面に顔から突っ込んだ際、サングラスが身代わりとなって割れることで、地面や障害物との直接の接触を防いでくれる可能性があるのだ。
また、車道を走る機会がほとんどのロードバイクでは、車のタイヤではねた小石が顔面に飛んでくることもある。
もちろん、ファッション用のサングラスでは衝撃ですぐに砕け散り、かえって危険な場合もある。
耐衝撃性の高いポリカーボネートなどの素材で作られたスポーツサングラスだからこそ、保護具としての機能が期待できるのである。
「サングラスはいらない」派を納得させるロードバイク用サングラスの選び方
サングラスの重要性を理解した上で、次に考えるべきは「どのようなサングラスを選ぶか」である。
ここでは、機能や形状、シーンに合わせた選び方のポイントを解説する。
レンズの機能で選ぶ
サングラスの心臓部とも言えるのがレンズである。
見た目だけでなく、機能性を正しく理解して選ぶことが重要だ。
UVカット機能は必須中の必須

前述の通り、紫外線から目を守ることは最重要項目である。
購入時には必ず「UV400」や「紫外線カット率99%以上」といった表記があるかを確認すべきだ。
レンズの色が濃いからといって、UVカット性能が高いとは限らない点に注意が必要である。
路面の照り返しを抑える「偏光レンズ」

偏光レンズ(Polarized Lens)は、路面や水面からの乱反射した光(ギラつき)をカットする特殊なフィルターを持つレンズだ。
これにより、アスファルトの照り返しが抑えられ、路面の凹凸や白線が非常に見やすくなる。
上写真のように路面のひび割れなどのが浮き出るように見えて、つまり高コントラストで視認性が良くなる。
偏光レンズは一度使うと手放せなくなるほど、視界の快適性が向上する。
オークリーのプリズムロードレンズは変更レンズの中でも、高コントラストで路面状況を把握しやすい。ジョウブレイカーのレビュー記事で詳細に解説している。
天候に合わせて明るさが変わる「調光レンズ」

調光レンズ(Photochromic Lens)は、紫外線の量に応じてレンズの色の濃さが自動的に変化するレンズである。
晴天時には色が濃くなり、曇天時やトンネル内では色が薄くなるため、一日中かけっぱなしで走行できるのが最大のメリットだ。
レンズ交換の手間がなく、様々な状況に対応できる万能性が魅力である。
おすすめの調光サングラスは下記の記事で詳しく解説。
コントラストを高める「ミラーレンズ」

レンズ表面が鏡のようになっているミラーレンズは、強い日差しを効果的に反射して眩しさを大幅に軽減する。
また、レンズのベースカラーによって、特定の色のコントラストを高め、景色の輪郭をはっきりとさせる効果もある。
見た目の格好良さだけでなく、機能的な側面も大きい。
レンズの種類 | 主な特徴 | おすすめのシーン |
偏光レンズ | 乱反射をカットし、ギラつきを抑える | 快晴時のサイクリング、水辺の走行 |
調光レンズ | 紫外線の量でレンズの濃度が自動変化 | 一日中走るロングライド、天候が変わりやすい日 |
ミラーレンズ | 強い日差しを反射し、眩しさを大幅に軽減 | 標高の高い山岳ライド、真夏の炎天下 |
通常レンズ | 基本的なUVカットと防眩機能 | 幅広いシーンに対応(カラーによる) |
フレームの形状で選ぶ
レンズ性能と並んで重要なのが、フレームの形状とフィット感である。
視界の広さと防風性を重視する「一眼(シールド)タイプ」

一枚の大きなレンズで構成されたタイプ。
フレームが視界を遮ることがなく、非常に広い視野を確保できるのが特徴だ。
顔を覆う面積が広いため、風の巻き込みや飛来物の侵入を防ぐ効果も高い。
プロ選手が使用しているのも、このタイプが主流である。
普段使いもしやすい「二眼タイプ」

左右のレンズが独立している、一般的なメガネに近い形状のタイプ。
一眼タイプに比べるとデザインがスポーティーすぎず、ライド後の休憩時や普段使いにも違和感が少ないのがメリットだ。
ただし、一眼タイプに比べると、視野の広さや防風性では一歩譲る。
フィット感を左右する「アジアンフィット」の重要性

欧米人向けの「グローバルフィット」モデルをそのままかけると、鼻の高さや顔の幅が合わず、走行中にずり落ちてきたり、頬にフレームが当たったりすることがある。
多くの海外ブランドでは、アジア人の骨格に合わせて設計された「アジアンフィット」モデルを用意している。
ノーズパッドの高さやフレームのカーブが調整されており、格段にフィット感が向上するため、可能な限り試着して選ぶことを推奨する。
シーン別おすすめレンズカラー

レンズの色は、見た目の印象だけでなく、それぞれに見やすいシーンが異なる。
レンズカラー | 特徴と効果 | おすすめの天候 |
グレー系 | 色調の変化が少なく、自然な見え方。眩しさを均一に抑える。 | 快晴 |
ブラウン系 | コントラストを高め、景色の輪郭をはっきりさせる。 | 晴れ~曇り |
イエロー系 | 明るい視界を確保し、曇天や夕暮れ時でもコントラストを高める。 | 曇天、雨天、夕暮れ |
ピンク/ローズ系 | ブルーライトをカットし、コントラストを向上させる。目が疲れにくい。 | 曇天、林道 |
クリア系 | 色をつけずに、紫外線や飛来物から目を守る。 | 夜間、悪天候 |
サングラスのカラー選びについては下記記事で詳しく解説している。
紫外線の強さによってレンズ濃度が変わる「調光」サングラスのおすすめは「ALTALIST KISOU ATR」。コスパが高い。
サングラスの代用は可能か?「いらない」を貫くための代替案

それでもなお、専用のサングラスに抵抗がある場合、いくつかの代替案が考えられる。
ただし、それぞれにメリットとデメリットが存在する。
シールド付きヘルメットという選択肢
ヘルメットにマグネットなどで着脱可能なシールドが付属しているタイプ。
サングラスとヘルメットが一体化しているため、かけ外しの手間がなく、メガネとの併用もしやすいのがメリットだ。
一方で、デザインの選択肢が限られることや、シールドと顔の間に隙間ができやすく、風を巻き込みやすいというデメリットもある。
眼鏡ユーザーはどうする?
視力矯正が必要なユーザーにとって、サングラス選びは悩ましい問題である。
選択肢としては、度付きレンズのサングラスを作る、コンタクトレンズと通常のサングラスを併用する、眼鏡の上からかけられるオーバーグラスを利用する、インナーフレームに度付きレンズを入れる、といった方法がある。
それぞれコストや見え方が異なるため、自身の視力や使い方に合った方法を眼鏡店などで相談するのが最善である。
ファッション用サングラスではダメな理由
「普段使っているおしゃれなサングラスで代用できないか?」と考えるかもしれないが、これは推奨できない。
ファッション用サングラスの多くは、耐衝撃性が考慮されていないため、落車時にレンズが割れて破片が目を傷つける危険性が高い。
また、顔へのフィット感や防風性もスポーツ用とは全く異なり、走行中にずり落ちたり、風を巻き込んだりして、かえって危険を招くことになる。
ロードバイクのサングラスに関するQ&A

ここでは、多くのサイクリストが抱く疑問について回答する。
Q1. 夜間走行でもサングラスは必要か?
A1. 必要である。
夜間は眩しさ対策は不要だが、虫や砂埃などの飛来物から目を守るという重要な役割は昼間と変わらない。
また、対向車のヘッドライトの眩しさをわずかに軽減する効果も期待できる。
夜間走行には、視界を確保できるクリアレンズのサングラスを使用するのが基本である。
Q2. レンズの曇り対策はどうすればいいか?
A2. 曇りの主な原因は、外気とサングラス内の温度差・湿度差である。
対策としては、ベンチレーション(通気口)付きのモデルを選ぶ、市販の曇り止めスプレーやクロスを使用する、信号待ちなどでは少しサングラスを浮かせて換気する、といった方法が有効だ。
Q3. 有名ブランドと格安品の違いは何か?
A3. 主な違いは、レンズの光学性能、フレームの素材とフィット感、そして安全性である。
有名ブランド品は、視界の歪みが極めて少なく、長時間の使用でも疲れにくい高品質なレンズを使用していることが多い。
また、フレームの素材も軽量で耐久性・柔軟性に優れ、緻密なフィッティングが可能だ。
もちろん、安価な製品の中にも優れたものはあるが、信頼できるブランドを選ぶことは、安全性への投資とも言える。
Q4. サングラスの正しい手入れ方法は?
A4. ライド後は、まず流水でレンズに付着した汗や砂埃を優しく洗い流す。
その後、中性洗剤を少しつけて指の腹で軽く洗い、再度よくすすぐ。
最後に、マイクロファイバークロスなどの柔らかい布で、水滴を優しく拭き取る。
ティッシュやウェアの裾で拭くと、レンズに傷がつく原因になるため避けるべきである。
まとめ:ロードバイクにサングラスは「いらない」のではなく「必須装備」である

この記事を通じて、ロードバイクにおけるサングラスが、単なるファッションアイテムではなく、自らの目を守るための極めて重要な「保護具」であることを理解いただけたかと思う。
紫外線による長期的な健康被害、虫や小石といった突発的な危険、風や眩しさによるパフォーマンスの低下。 これら全てのリスクを、サングラス一枚で大幅に軽減できるのである。
「見た目が大げさ」「価格が高い」といった当初の抵抗感は、その絶大なメリットの前では些細な問題に過ぎない。
筆者自身、サングラスの重要性を知ってからは、たとえ数十キロのライドへ行くだけでも、ヘルメットと同時に必ずサングラスをかけるようになった。
ロードバイクにサングラスは「いらない」のではない。
安全で快適なサイクルライフを末永く楽しむために、絶対に「なくてはならない必需品」なのだ。
まずは比較的手に取りやすい価格帯のモデルからでも良い。
ぜひ、その効果を自身で体感してほしい。
筆者が所有している「オークリー ジョウブレイカー」は、独自のプリズムロードレンズが路面の凹凸を視認し訳すしてくれるオススメのロードバイク用サングラス。