ロングライドのコツ

ロングライドの朝食完全ガイド!ハンガーノックを未然に防ぐ食事の全て

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ロングライドはサイクリストにとって最高の冒険である。

見知らぬ土地の景色、仲間との一体感、そして達成感。

しかし、この素晴らしい体験は、時として悪夢に変わることがある。突然ペダルが重くなり、力が入らなくなり、めまいや吐き気に襲われる…そう、「ハンガーノック」だ。

多くのサイクリストが経験するこのエネルギー切れの恐怖は、ロングライドの楽しさを根こそぎ奪い去る。

そして、このハンガーノックを未然に防ぐ最大の鍵こそが「朝食」なのである。

ロングライド当日の朝、何を、いつ、どれだけ食べるかが、その日のパフォーマンスを決定づけると言っても過言ではないのだ。

この記事では、栄養学的な観点と、筆者自身が数々のロングライドやブルベで経験した成功と失敗の体験談を交えながら、ロングライドを最後まで心から楽しむための「最強の朝食戦略」を徹底的に解説していく。

もう、エネルギー切れで辛い思いをするのはおわりだ。

この記事でわかること

  • ロングライドで朝食が死活問題となる本当の理由
  • 朝食で絶対に摂るべき栄養素と具体的なメニュー
  • スタート時間から逆算した食事の最適なタイミング
  • 【状況別】コンビニで手軽に揃うおすすめの朝食
  • ロングライド前日の食事から当日ライド中の補給戦略

なぜロングライドで朝食が死活問題になるのか?

結論から言えば、朝食はロングライドにおける最初の、そして最も重要なエネルギー補給だからだ。

我々の体は、主に「糖質」をエネルギー源として筋肉を動かしている。

体内に貯蔵できる糖質(グリコーゲン)の量には限りがあり、睡眠中にもエネルギーは消費されるため、朝起きた時点では体内のグリコーゲンタンクはかなり減った状態にある。

この空っぽに近いタンクにエネルギーを補充しないまま走り出すとどうなるか。

当然、早い段階でエネルギーが枯渇し、ハンガーノックを引き起こす

ハンガーノックとは、極度の低血糖状態のことで、脳や筋肉が正常に機能しなくなる非常に危険な状態だ。

筆者のハンガーノック体験談

初めて150kmライドに挑戦した日のことだ。

当日の朝、緊張から食欲がなく、ゼリー飲料とコーヒーだけで家を飛び出した。

「途中で補給すればいいだろう」と安易に考えていたのが全ての過ちであった。

快調に飛ばせたのは最初の50kmだけ。

80kmを過ぎたあたりから急にペダルが重くなり、景色の彩度が失われていくような感覚に陥った。

100km地点の峠道では、完全に足が止まり、道端に座り込んでしまった。

手足は痺れ、冷や汗が止まらない。頭がボーッとして、自分がどこにいるのかさえ曖昧になる。

これこそがハンガーノックの恐怖だ。

近くの自販機で甘いジュースを買い、飲んでなんとか回復したが、残りの50kmは地獄そのものであった。

この苦い経験から、何よりも朝食の重要性を痛感したのである。

ロングライドの朝食で摂るべき3大栄養素

では、具体的にどのような栄養素を摂取すれば良いのか。

基本は「高糖質・中タンパク質・低脂質」である。それぞれの役割を理解しよう。

エネルギーの主役「糖質(炭水化物)」

糖質は、ロングライドにおける最も重要なエネルギー源だ。

摂取した糖質はグリコーゲンとして筋肉や肝臓に蓄えられ、運動時のエネルギーとして使われる。

朝食でこのグリコーゲンを最大限に満たしておくことが、ハンガーノックを防ぐ絶対条件となる。

  • 役割: 即効性のあるエネルギー源。体内のグリコーゲン貯蔵量を満たす。
  • 摂取量の目安: 体重1kgあたり1〜4g。例えば体重60kgの人なら60g〜240gの糖質を摂取したい。スタートまでの時間に応じて調整する。
  • 具体的な食材: ご飯、うどん、パスタ、パン、餅、シリアル、バナナ、カステラなど。特にご飯や餅は腹持ちが良く、ロングライドの朝食に適している。

エネルギーの持続性を高める「脂質」

脂質も重要なエネルギー源であるが、糖質に比べて消化吸収に時間がかかる。

そのため、朝食で過剰に摂取すると胃もたれの原因となり、パフォーマンスを低下させる可能性がある。

しかし、全く摂らないのも問題だ。

脂質はエネルギーの持続性を高める効果があるため、適量を摂取することが望ましい。

  • 役割: 持久的な運動のエネルギー源。
  • 注意点: 揚げ物や生クリームといった消化の悪い脂質は避ける。
  • 具体的な食材: 魚の脂(サバ、鮭など)、ナッツ類、アボカド、卵に含まれる脂質など、良質なものを少量摂るのがポイントだ。

体の修復役「タンパク質」

タンパク質は筋肉の主成分であり、長時間の運動による筋肉の分解を防ぎ、ライド後の回復を助ける役割を持つ。

朝食で適量を摂取しておくことで、体へのダメージを軽減することができる。

ただし、これも脂質同様、摂りすぎは消化の負担となるため注意が必要だ。

  • 役割: 筋肉の分解抑制、ライド後のリカバリー促進。
  • 注意点: 消化に時間がかかるため、量は控えめに。
  • 具体的な食材: 卵、鶏胸肉、鮭、納豆、豆腐、ヨーグルトなど。

【時間別】ロングライド朝食の理想的なタイミングと量

「何を食べるか」と同じくらい重要なのが、「いつ食べるか」である。

消化吸収にかかる時間を考慮し、スタート時間から逆算して食事を摂る必要がある。

スタート3〜4時間前が理想

最も理想的なのは、スタートの3〜4時間前に固形物の食事をしっかりと済ませておくことだ。

この時間があれば、食べたものが消化吸収され、エネルギーとして使える状態になる

  • 食事内容: ご飯やパンなどの糖質をメインに、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂取する。定食スタイルの食事が理想的だ。
  • メニュー例:
    • 和食: ご飯(お茶碗2杯)、味噌汁、焼き鮭、卵焼き、納豆
    • 洋食: 全粒粉パン(2〜3枚)、ベーコンエッグ、ヨーグルト、フルーツ(バナナなど)
  • 筆者の場合: 7時スタートのブルベに参加する際は、朝4時に起床し、4時半には朝食を摂り始める。メニューは決まっていて、コンビニのおにぎりを2~3つ(鮭、梅など)、インスタントの豚汁、エナジージェルだ。これで約800〜900kcal、糖質は150g以上を確保する。

スタート1〜2時間前の場合

寝坊してしまった、あるいは早朝スタートで3時間前には起きられない、というケースも多いだろう。

その場合は、消化に良いものを選んで摂取する。

  • 食事内容: 固形物は量を控えめにし、消化吸収の早い糖質を中心に摂る。脂質や食物繊維が多いものは避けるのが賢明だ。
  • メニュー例: おにぎり1〜2個、バナナ、カステラ、うどん(素うどんなど)、エネルギーゼリーなど。
  • ポイント: この時間帯の食事は、あくまで「つなぎ」のエネルギー補給と考える。ライド開始後、早めのタイミングで補給を開始する必要がある。

スタート直前(30分前)の最終補給

スタート地点に着いてから、最後のダメ押しでエネルギーを補給する。

ここでは、すぐにエネルギーに変わる、ごく少量の糖質を摂るのが目的だ。

  • 食事内容: 固形物は避け、液体やジェル状のものが最適。
  • メニュー例: エネルギーゼリー、羊羹(ミニサイズ)、ブドウ糖タブレットなど。

【パターン別】最強のロングライド朝食メニュー提案

状況に応じて最適な朝食は変わる。

ここでは「自炊派」と「コンビニ調達派」に分けて、具体的なメニューを提案する。

自炊派におすすめの鉄板メニュー

やはり、栄養バランスを完璧にコントロールできる自炊が最強である。

特に前日から準備しておくと、当日の朝が非常に楽になる。

  • 最強和食セット:
    • 主食: ご飯(可能なら2杯)。前日の夜に多めに炊いておくと良い。
    • 汁物: インスタントの味噌汁や豚汁。体を温め、塩分も補給できる。
    • 主菜(タンパク質): 焼き鮭 or 納豆。鮭の脂質は良質でエネルギーにもなる。
    • 副菜: 卵焼き or ゆで卵。手軽なタンパク質源。
    • デザート: バナナ。カリウムが豊富で、足攣り予防にもなる。

コンビニ調達派の賢い選択術

遠征先からのスタートなど、コンビニに頼らざるを得ない状況も多い。

コンビニは補給の宝庫だが、選び方を間違えると失敗する。

  • まずは「避けるべきもの」を知る:
    • 揚げ物: 唐揚げ、フライドチキン、コロッケなど。脂質が多く消化に悪い。
    • 菓子パン: メロンパンやデニッシュ系は脂質と砂糖の塊。血糖値を急上昇させた後、急降下させるリスクがある。
    • カップラーメン: 脂質が多く、消化に時間がかかる。
  • おすすめの組み合わせ例:
    • バランス重視セット: 幕の内弁当(揚げ物が少ないもの)+野菜ジュース
    • 定番おにぎりセット: おにぎり2個(鮭、梅、昆布など)+ゆで卵+バナナ1本
    • 手軽なパンセット: サンドイッチ(ハム&たまごなど)+ヨーグルト(プレーン)+オレンジジュース
    • 温かいものセット: レトルトのお粥 or パックご飯+インスタント味噌汁+サラダチキン

コンビニで選ぶ際は、商品の裏にある栄養成分表示を確認する癖をつけると良い。

「炭水化物」が多く、「脂質」が少ないものを選ぶのが基本だ。

朝食だけじゃない!ロングライドを成功させる食事戦略

完璧な朝食を摂っても、その後の戦略がなければ意味がない。

ロングライドは朝食から始まり、ライド後の食事で終わる一連のプロセスなのだ。

前日の食事(カーボローディング)の重要性

より多くのグリコーゲンを体に貯蔵するため、ライド前日から高糖質な食事を意識する「カーボローディング(グリコーゲンローディング)」が有効だ。

特に200kmを超えるようなライドでは効果が大きい。

  • 夕食の例: パスタ(ペペロンチーノなどオイルベースのもの)、うどん、ご飯大盛りなど。肉や魚は脂質の少ないものを選ぶ。
  • 注意点: 暴飲暴食は禁物。また、消化に悪い生ものや、利尿作用があり睡眠の質を下げるアルコールは避けるべきである。

走行中の補給戦略

朝食で満たしたエネルギーも、走り続ければ必ず減っていく。

重要なのは「お腹が空く前に、こまめに補給する」ことだ。

  • タイミング: 1時間に1回、最低でも90分に1回は補給する。
  • 量の目安: 1時間あたり150〜250kcal、糖質30〜60gが目安。
  • 補給食の例:
    • 固形物: ミニ羊羹、ミニアンパン、カステラ、バナナ、シリアルバー
    • ジェル・液体: エネルギーゼリー、エナジージェル
  • 筆者の場合: おにぎりがメイン。ただし背中のポケットやフレームバッグなどに、すぐに取り出せるジェル類と、少しお腹にたまるミニ羊羹やソイジョイを分けて入れている。そして、サイクルコンピューターのアラームを30分ごとに設定し、強制的に補給のタイミングを知らせるようにしている。これにより、補給忘れを確実に防ぐことができる。

Q&A|ロングライドの朝食に関するよくある質問

Q1. 朝早く食欲がない場合はどうすればいい?

A1. 無理に固形物を詰め込む必要はない。

まずはバナナ1本やエネルギーゼリー、飲むヨーグルトなど、流動食に近いものから摂取してみよう。

そして、走り始めてから30分〜1時間後に、おにぎりなどの固形物を補給する「分割食」という考え方が有効だ。

とにかく、何も摂らない「ゼロ」の状態だけは避けるべきである。

Q2. コーヒーは飲んでも大丈夫?カフェインの効果は?

A2. 適量であれば問題ない。

カフェインには覚醒作用や、脂質をエネルギーとして使いやすくする効果が期待できる。

しかし、利尿作用があるため、水分補給はいつも以上に意識する必要がある。

また、胃への刺激が強いと感じる人は避けた方が無難だ。

スタートの1時間以上前に、カップ1杯程度に留めておくのが良いだろう。

Q3. プロテインは朝食で摂るべき?

A3. 必須ではない。

プロテイン(タンパク質)は消化に時間がかかるため、朝食のメインにするのはおすすめできない。

摂るとしても、ヨーグルトや牛乳、豆乳などで少量補う程度にしよう。

プロテインは、むしろ運動後の筋肉修復のために摂取する方が効果的である。

Q4. 食物繊維は摂りすぎない方がいいって本当?

A4. 本当である。

食物繊維は消化に時間がかかり、お腹にガスが溜まる原因になることがある。

便通を良くする健康的な栄養素だが、ロングライドの当日の朝に限っては、摂りすぎに注意が必要だ。

玄米より白米、全粒粉パンより白いパン、ゴボウやキノコが沢山入った煮物よりはシンプルな味噌汁、といった選択が望ましい。

まとめ:ロングライド前の朝食が、その日のライドの質に繋がる!

ロングライドにおける朝食は、単なる腹ごしらえではない。

それは、1日のライドの質を決定づけ、安全を確保するための最も重要な儀式である。

  • スタート3〜4時間前に「高糖質・中タンパク質・低脂質」のバランスの取れた食事を摂るのが理想。
  • 時間がなければ、消化の良い糖質(おにぎり、バナナ、カステラなど)を中心に摂取する。
  • コンビニを利用する場合は、揚げ物や菓子パンを避け、栄養成分表示を確認する。
  • 朝食だけでなく、前日の食事ライド中のこまめな補給もセットで考える。

ハンガーノックの辛さは、経験した者でなければ分からない。

しかし、正しい知識を持ち、周到に準備をすれば、そのリスクは限りなくゼロに近づけることができる。

最高の朝食を摂り、エネルギー満タンの体でペダルを漕ぎ出そう。

  • この記事を書いた人

ミル

ロードバイク歴10年の週末ソロライダー。 ロングライドが苦手だったが、今はブルベを楽しんでいる。2022年SR取得。 ロングライドに挑戦する人を応援したい。 にほんブログ村

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