雨はサイクリストにとって大きなの課題だ。
天気予報を信じて走り出したものの、突然の雨に見舞われ、ずぶ濡れになって不快な思いをした経験は誰にでもあるだろう。
しかし、適切なレインウェアさえあれば、雨天時のライドは決して不快なものではなくなる。
むしろ、雨音を聞きながら走る静かな時間は、晴天時とは違った魅力があるのだ。
問題は、数多ある製品の中から、本当に「使える」一着をどう選ぶか、である。
安物買いの銭失いになることなく、自分のライディングスタイルに最適なレインウェアを見つけるための知識が不可欠だ。
この記事では、ロードバイク歴10年である筆者の数々の失敗と成功の経験に基づき、ロードバイク用レインウェア選びの核心を徹底的に解説する。
この記事でわかること
- ロードバイクに専用レインウェアが必要な理由
- 失敗しないためのレインウェア選び5つの重要ポイント
- GORE-TEXなど主要な防水透湿素材の特徴
- ライディングスタイル別のおすすめレインウェア
- レインウェアの性能を維持するためのお手入れ方法
なぜロードバイクに専用レインウェアが必要なのか?

「雨具なんて、ホームセンターのカッパで十分ではないか?」 そう考える人もいるかもしれない。
しかし、それは大きな間違いである。
ロードバイクというスポーツの特性上、一般的なレインウェアでは対応できない、専用品でなければならない明確な理由が存在するのだ。
一般的なカッパとの決定的違い
ロードバイク用レインウェアと一般的なカッパは、似て非なるものである。
その違いは、主に以下の4つの点に集約される。
項目 | ロードバイク用レインウェア | 一般的なカッパ |
カッティング | 深い前傾姿勢を前提とした立体裁断(背中側が長い) | 直立姿勢を基本としており、前傾すると背中や手首が露出する |
フィット感 | 風でバタつかないタイトなシルエット | 全体的にゆったりしており、走行中に風を受け大きくバタつく |
素材 | 高い「防水性」と「透湿性」を両立 | 防水性のみを重視し、透湿性が低く内側が蒸れやすい |
安全性 | 被視認性を高める反射材(リフレクター)を各所に配置 | 反射材がないか、あっても限定的 |
これらの違いは、走行中の快適性と安全性に直接影響を与える。
特に「透湿性」の有無は決定的だ。
筆者の失敗談:防水ウェアのはずが、内側からずぶ濡れに
筆者が初めて400kmブルベを走ったとき、6月の雨予報であったがどうしても走りたくて、安価なウィンドブレーカーを羽織って走り出したことがある。
レインウェアというものを持っていなかったので、代用してしまったのだ。
当日はスタート前から豪雨。
それでも、ある程度の雨対策を用意していたので、走ってみることに。
降雨のなか走り始めて3時間、そのウィンドブレーカーは、防水性はしっかりしていたものの、内側が汗や結露でビチャビチャになってしまった。
透湿性がまったくなかったためだ。
結局、10時間以上を雨に打たれ、ジャージはずぶ濡れで寒さと戦いながら何とか完走した。
レインウェアは、防水性だけあれば良いというものではなく、透湿性も同じくらい重要なことを身をもって知った。
失敗しない!ロードバイク用レインウェア選びの5つの重要ポイント

では、具体的にどのような基準でレインウェアを選べば良いのか。
数々の製品を試し、時に失敗してきた筆者がたどり着いた、絶対に外せない5つの重要ポイントを解説する。
①最重要項目!「防水性」と「透湿性」のバランスを見極める
レインウェアの心臓部とも言えるのが、この二つの性能である。
カタログスペックに踊らされることなく、その数値が持つ意味を正しく理解する必要がある。
防水性:耐水圧(mm)
生地がどれくらいの水圧に耐えられるかを示す数値だ。
一般的な傘の耐水圧が500mm程度であることからもわかるように、ロードバイク用としては最低でも10,000mm以上は欲しいところである。
この数値が高ければ高いほど、強い雨や長時間濡れ続ける状況でも浸水しにくくなる。
透湿性:透湿度(g/m²/24h)
24時間でどれくらいの水分(水蒸気)を生地の外に排出できるかを示す数値だ。
安静時でも人間は1時間に約50gの汗をかくと言われる。 ロードバイクのような激しい運動では、その量は1,000gを超えることもある。
この汗を効率的に排出できなければ、ウェアの内部は結露し、結局濡れてしまう。
快適なライドのためには、最低でも10,000g/m²/24h、できれば20,000g/m²/24h以上のスペックが望ましい。
耐水圧・透湿度の目安
レベル | 耐水圧の目安 | 透湿度の目安 | 対応する状況 |
最低ライン | 10,000 mm | 8,000 g/m²/24h | 小雨、短時間の走行、緊急用 |
快適ライン | 15,000 mm | 15,000 g/m²/24h | 本降りの雨、長時間の走行 |
高性能ライン | 20,000 mm以上 | 20,000 g/m²/24h以上 | 激しい雨、レース、ヒルクライムなど高強度な運動 |
また、生地だけでなく、縫い目を裏から塞ぐ「シームテープ」処理がされているかも必ず確認すべきだ。
どんなに高性能な生地でも、縫い目から浸水しては意味がない。
②走行性能を左右する「フィット感」と「ストレッチ性」
ロードバイクは空気抵抗との戦いである。
ウェアが風でバタつくと、それだけで余計な体力を消耗し、スピードも低下する。
そのため、体にぴったりとフィットする、エアロ効果を意識したシルエットが理想だ。
かと言って、ただタイトなだけではいけない。
ペダリングやダンシング、ハンドル操作など、ライディング中の大きな動きを妨げない「ストレッチ性」が不可欠である。
試着できるのであれば、実際に前傾姿勢をとってみて、背中や腰、手首が突っ張らないかを確認することが重要だ。
特に袖の長さは重要で、ブラケットを握った際に手首が露出しない、長めの設計になっているものを選ぶべきである。
③安全性と利便性を高める「機能性」
防水透湿性やフィット感以外にも、快適性と安全性を高めるための機能性も必要に応じて検討しよう。
- 視認性(リフレクター) 雨天時は視界が悪くなるため、ドライバーからの被視認性を高めることが事故防止に直結する。 背中、腕、足首など、動きのある部分に大きな反射材が配置されているモデルは安全性が高い。 また、ウェア自体の色も、黒や紺などのダークカラーよりは、イエロー、オレンジ、ライトブルーといった明るい色の方が日中の視認性は格段に向上する。
- パッカブル性能 急な雨に備えてジャージのポケットに入れて携行する場合、いかに小さく、軽くなるかが重要だ。 手のひらサイズに収納できるモデルであれば、ライドの負担になることもない。 「お守り」として常に携帯するなら、この性能は必須である。
- ベンチレーション 透湿性だけでは追いつかないほどの発汗量になった場合、ウェア内の熱気を強制的に排出する機能が役立つ。 脇の下や背中にジッパーで開閉できるベンチレーションが備わっていると、体温調節が容易になる。
- その他のディテール
- ドロップテイル: 後輪が巻き上げる泥水からお尻を守るため、後ろの裾が長くなっている形状。
- 袖口のベルクロ: 手首からの雨風の侵入を防ぎ、フィット感を調整できる。
- 止水ジッパー: ジッパー部分からの浸水を防ぐための重要な機能。
④素材で決まる!GORE-TEXと各社の独自素材
レインウェアの性能は、その心臓部である「メンブレン(防水透湿フィルム)」によって大きく左右される。
その代表格が「GORE-TEX」であり、その他にも多くのメーカーが独自の高機能素材を開発している。
- GORE-TEX(ゴアテックス) 防水透湿素材の代名詞的存在。 信頼性が非常に高く、多くのハイエンドモデルで採用されている。 ロードバイク用では、特に以下の種類が有名だ。
- GORE-TEX Paclite® (Plus): 軽量性と収納性を重視した2.5層構造。携行用に最適。
- GORE-TEX Active: GORE-TEXファミリーの中で最も高い透湿性を誇る。高強度のライド向け。
- GORE-TEX SHAKEDRY™: メンブレンがむき出しになった革新的な素材。生地が水を含むことがなく、振るだけで水滴が落ちる驚異的な撥水性を持つ。ただし、耐久性が低い。
- 各社の独自開発素材 GORE-TEX以外にも、優れた独自素材が多数存在する。
- Pertex® Shield: GORE-TEXに匹敵する性能を持ちながら、よりしなやかで軽量なのが特徴。
- Polartec® NeoShell®: 高い防水性に加え、通気性も備えているのが特徴で、蒸れにくい。
- ブランド独自素材: Raphaの独自素材や、日本のモンベルが開発した「ドライテック®」など、各社がコストと性能のバランスを追求した素材を開発している。
これらの素材はそれぞれに一長一短がある。
絶対的な信頼性を求めるならGORE-TEX、軽さや着心地を重視するならPertex® Shieldなど、自分の優先順位に合わせて選ぶのが賢明だ。
⑤予算と相談:価格帯による性能の違い
ロードバイク用レインウェアは決して安価な買い物ではない。
価格帯によって性能にどのような違いがあるのかを理解し、自分の予算と求める性能のバランスを取ることが重要だ。
- 1万円以下 エントリーモデル。防水性と最低限の透湿性を備えているが、本格的な雨天ライドでは蒸れを感じやすい。 短時間の通勤や、緊急用と割り切って使うなら選択肢になる。
- 1万円~3万円 最も選択肢が豊富なボリュームゾーン。 各社の独自素材を採用し、防水性・透湿性ともに十分な性能を持つモデルが多い。 フィット感や細部の作りも良くなり、多くのサイクリストにとって満足度の高い一着が見つかる価格帯である。 筆者としては、初心者が最初に買うならこの価格帯の製品を強く推奨する。
- 3万円以上 GORE-TEX ActiveやSHAKEDRY™の後継技術などを採用したハイエンドモデル。 最高の防水透湿性、圧倒的な軽量性、完璧なフィット感を備える。 レースやブルベなど、過酷な環境下でパフォーマンスを追求するシリアスライダー向けの価格帯だ。 一度このクラスの快適さを知ると、もう元には戻れないほどの性能差があるのは事実である。
シチュエーション別!おすすめロードバイクのレインウェア

全てのサイクリストに共通の「最高の一着」は存在しない。
自分のライディングスタイルに合わせて、重視するポイントを変える必要がある。
本格的なロングライド・ブルベ派向け
- 重視するポイント: 透湿性、フィット感、軽量性・パッカブル性能
- 考え方: パフォーマンスを最優先するこの層には、GORE-TEX Activeなどのハイエンド素材が最適解となる。 少しでも空気抵抗を減らすため、体に吸い付くようなエアロフィットは必須。 また、レースやイベントでは天候の急変に備え、使わない時はジャージのポケットにコンパクトに収納できる携帯性が極めて重要になる。 価格は高くなるが、過酷な状況下での快適性と集中力を維持するための投資と考えるべきだ。
おすすめ製品:モンベルのロードバイク用レインウェア「U.L.サイクル レインジャケット」は、ブルベライダーの御用達。
【素材】ドライテック®2レイヤー[表:15デニール・バリスティック® エアライトナイロン・リップストップ]透湿性15,000g/m²・24hrs(JIS L-1099B-1法・参考値)
https://webshop.montbell.jp/goods/disp_fo.php?product_id=1130411
モンベルでは、レインウエアに求められる耐水圧20,000mm以上をクリアした素材のみを使用しています。
【平均重量】161g
【カラー】ブルー(CNBL)、シトロンイエロー(CYL)、イエロー(YL)
【サイズ】XS、M、XL (男女兼用)
【収納サイズ】6×6×13cm
【特長】はっ水糸/ジッパー付きポケット1個(左胸1)/スタッフバッグ付き
【機能】トライアクスルフード/ネックアジャスター/ジッパーがあごに当たらない仕様/立体裁断(ひじ)/アルパインカフ/自転車専用パターン/視認性を高める機能
とりあえずの1枚が欲しい初心者向け
- 重視するポイント: コストパフォーマンス、バランスの取れた性能
- 考え方: 最初の一着としては、1万円台後半から2万円台で、耐水圧・透湿度ともに10,000以上のスペックを持つモデルがおすすめだ。 このクラスであれば、一般的な雨天ライドで不満を感じることは少ないだろう。 まずはジャケットだけ購入し、雨の日も走る楽しさを実感してから、必要に応じてレインパンツやシューズカバーなどのアクセサリーを買い足していくのが賢明なステップである。
とりあえずのコスパ製品が欲しいなら、軽量性・携帯性に優れ、価格も安いノースフェイスの「ストライクトレイルジャケット」がおすすめ。耐水圧20,000mm、透湿性40,000g/m2-24h(B-1法)の防水透湿性を維持しながら、さらなる軽量化を実現した軽量防水シェルジャケット。
薄地3層「HYVENT」素材を使用した、高い防水透湿性を備えたシェルジャケットです。重量はわずか約125g(メンズ Lサイズ)。素材には、必要十分な強度と軽量性のバランスを考慮した、10デニールの3層構造「ハイベントライトウェイト」を使用。人間工学に基づいた動きやすいパターンで仕上げ、フードや袖口はシャーリング仕様を採用し、シンプルさを追求しています。レースゼッケンが透けて見えるクリアカラーをラインナップ。コンパクトに収納できるスタッフサックが付属。
https://www.goldwin.co.jp/ap/item/i/m/NP62576?srsltid=AfmBOoq3GH7JZgUAPUxzhlAPk6dKpHWkkhEUEfgwTn7MXP8rfbTfdsIL
レインウェアだけじゃない!ロードバイク雨天ライドを快適にする関連アイテム
完璧なレインジャケットを手に入れても、それだけでは雨天対策は万全とは言えない。
以下のアイテムを組み合わせることで、快適性は飛躍的に向上する。
レインパンツ/ニッカー: 下半身を雨と泥はねから守る。ペダリングを妨げない立体裁断とストレッチ性が重要。
シューズカバー: 防水・防風素材のシューズカバーは、足先の冷えを防ぐ必須アイテム。
サイクルキャップ: ヘルメットの下に被ることで、雨が顔に垂れてくるのを防ぎ、視界を確保する。ツバが雨よけになる。
泥除け: 走行中のタイヤからの路面の水分の跳ね返りを防ぐことで、シューズやウェアが濡れにくくなる。
防水グローブ: 濡れた手はブレーキ操作の感覚を鈍らせる。薄手で操作性の良い防水グローブが有効。
アイウェア: クリアレンズや調光レンズのサングラスは、雨粒や泥はねから目を守り、安全な視界を確保するために不可欠。
よくある質問(Q&A)

ここでは、レインウェアに関するよくある疑問について回答する。
Q1. レインウェアの洗濯や手入れ方法は?
A1. 専用の洗剤を使い、洗濯機の「手洗いモード」などで優しく洗うのが基本だ。
洗剤が残ると透湿性能が低下するため、すすぎは念入りに行う必要がある。 脱水は短時間にし、乾燥は風通しの良い日陰で吊り干しする。
乾燥後に、低温設定で乾燥機にかけるか、当て布をしてアイロンをかけると撥水性が回復する場合がある。
詳しくは製品の洗濯表示を必ず確認すること。
Q2. 撥水スプレーは使った方がいい?
A2. 定期的な使用を推奨する。
レインウェアの表面の撥水性が低下すると、生地が水を含んでしまい(表生地の保水)、透湿性能が著しく落ちる原因となる。
洗濯後、完全に乾いた状態で、フッ素系の撥水スプレーを吹きかけることで、初期の性能を長く維持できる。
Q3. 夏と冬でレインウェアは変えるべき?
A3. 理想を言えば、変えるのがベストだ。
しかし、多くのサイクリストは一着を着回しているのが実情だろう。
その場合、レイヤリング(重ね着)で調整するのが現実的だ。
夏は半袖ジャージの上に直接羽織り、冬は保温性の高いインナーやミッドレイヤーの上に着用する。
ベンチレーション機能があれば、季節を問わず温度調整がしやすくなる。
Q4. ジャケットの色は何色が良い?
A4. 安全性を最優先するなら、断然「蛍光色(イエロー、ピンクなど)」や「明るい色(白、ライトブルーなど)」である。
雨天や薄暗い状況では、ドライバーからの被視認性が命綱となる。
デザインの好みもあるだろうが、特に交通量の多い場所を走る機会が多いサイクリストは、安全性を第一に色を選ぶべきだと筆者は考える。
まとめ:レインウェアはロードバイクに適した製品から選ぼう!

ロードバイク用レインウェアは、単なる雨具ではない。
それは、雨という天候を乗りこなし、サイクリングの可能性を広げてくれる「戦略的装備」である。
最後に、この記事の要点をまとめる。
- ロードバイクには、前傾姿勢に対応し、バタつかず、蒸れない専用レインウェアが必須である。
- 選ぶ際の最重要ポイントは**「防水性」と「透湿性」**。耐水圧・透湿度ともに10,000以上のスペックを目安にすること。
- フィット感、ストレッチ性、視認性、パッカブル性能といった機能性も快適性と安全性を大きく左右する。
- GORE-TEXなどの高性能素材は高価だが、それに見合う快適性を提供してくれる。
- 自分のライディングスタイルと予算に合わせて、最適なバランスの一着を選ぶことが後悔しないための鍵である。
適切な一着を手に入れれば、これまで憂鬱だった雨の日のライドがより快適になる。
この記事が、あなたにとって最高のレインウェアを見つける一助となれば幸いだ。
ロードバイク用ではないものの、長距離ライダーに人気のノースフェイスのトレラン用レインジャケット。高い防水透湿性とわずか125gの軽量性がロードバイクにも適している。(筆者も所有)